ヒ カ リ ノ 雫

わたしたちはこの世界に生をうけた一滴のヒカリ。世界はヒカリの波紋。愛のヒカリで溢れますように。sachi ブログです。

白い杖(2)



子供のころのココロノコリ、
白い杖の記憶。

こんなヒトになりたいと思った日


白い杖(1)のつづき。







すっかり大人になったわたしは
実家から京都、京都から東京へと移り
どこでも味わえなかった満員電車もなんとかこなす27歳になっていた。

ヒールだって履いちゃうんだから。


実家を出て一人暮らしを始めてから、
いろんな経験の中で「人見知りは損だな」という結論に至り
あっという間に克服して、
今では誰とでも話せるようになった。

少しは大人になったのだ。






そんなある日、



いつものように家路に向かう満員電車を乗り継ぐ。


ふと、一人の女性がふわっと視界にフォーカスされてきた。

ドア近く、中年女性が静かに目を閉じて手摺につかまって立っている。
彼女のもう一つの手には白い杖が。







あの小5の夏以来出会えなかった白い杖。


幸い、とても近くにいたし
小5の時と違って、話しかけるのは苦ではない。

とはいっても、

緊張もしたけども。。




次の駅が近づいたあたりで、静かに話しかけた。

「あの、降りられる駅はどこですか?」

「○○です。」


彼女からの返事はすぐだった。



「わたしも一緒です。
  よろしければご一緒しましょう。」

「ありがとうございます。」


伏し目がちな彼女から笑顔がこぼれた。

ドキドキしつつもとても嬉しかった!


(できた!)




駅につく直前に、二の腕を彼女へ差し出し

「降ります」

と声をかけて、ゆっくり一緒に電車から降りる。
ここは乗り換え駅でもあるので、物凄く人が大勢いる。
人通りがなるべく少ないところを選んで出来る範囲でゆっくり進む。


彼女は別の路線に乗り換えて、当時のわたしの最寄駅で更に乗り換える。

階段を下りたり、曲がったり、ホームの適当なところで止まったり

そんなタイミングで、彼女に声をかけつつ進む。


わたしの二の腕を掴んだ反対の手には白い杖。
でもわたしにつかまっている時は、白い杖が地面に着くことはあまりない。
わたしが白い杖。



なんとか最寄り駅についたそのホームで
また更に電車に乗り継ぐ彼女を預けられそうな素敵女子を見つけて託した。
とてもすんなり承諾してくださり
白い杖の彼女とも、笑顔でサヨナラできた。




見た目はそれなりの大人女子だったかもだけど
頭の中は完全に小5の夏のわたしで
テストで100点とったより嬉しい気分だった。


(バンザーイ!できたー!)


世界と完ぺきに調和した瞬間だった。









それから暫くして、

また彼女に会ったのだ。


満員電車の中で、あの時と同じ、ドアの近くの手摺につかまり
もぅ片方の手には白い杖が。



こないだと同じように声をかけて、
乗り換えの駅で声をかけながらゆっくり降りる。

雑踏の中、邪魔にならないように
安全なところを選んで誘導し、次の乗り換えポイントまでそろそろと移動。



その時、視線を感じた方に顔をやると

人の波と逆方向に顔を向けて、こっちを向いて立っている
体格の良い長身のスーツをビシッとこなしたとても立派な中年男性がいた。


彼は少しびっくりした顔をしてこちらを見ている。
明らかにわたしを見ている。


・・・?w




人並みをかき分けて近づいてきた彼からは

「どうもありがとうございます!」と声をかけられる。

その声に気付いた傍らの彼女は、今まで見たことないほどの笑顔になり
その声の方に近づいて行った。

ご主人だった。



「ぃ、いえいえ。良かったです。」

みたいな、意味不明なことを口走ったあとw
彼女を彼にバトンタッチ。

彼の腕にしっかりとつかまる、とっても幸せそうな笑顔。
その姿を見てなんだか照れてしまい、思わずうつむいてしまった。


それぞれ会釈をして、そこでわかれた。

寄り添う二人の後ろ姿、とってもとっても素敵だった。







断片だけみると足りてないようなことも
いろんなことが調和して、この世界があるのかも

足りない時間が
なんでもない日常の一遍を、輝かせてみせてくれるのな





そんな事に、なんとなく気が付けた気がした。







当時の彼氏に、この出来事を話してみたら
なぜかガクブルだったw

そして、白い杖の人に声をかけたことをとても賞賛してくれた。




もぅ大人なわたしは、そんな彼をみて
ココロの中でこんなになった。




(・д・)チッ







ココロは中2









つづく

 

 

 

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